グローバル人材育成

ビジネスのグローバル化が急速に進むなか、「拡大したくても海外事業を担える人間がいない!」「現地スタッフをリードできる人材がいない!」という経営者・事業部長の叫びを、いたるところで耳にします。グローバルビジネスに携わる企業は、大きく分けて「開発」・「調達」・「生産」・「販売」・「支援業務」の何れかまたはすべてを、海外市場を絡めながら行っていますが、グローバル事業の企画書がいくら書けても、それを実行できる人材を備えることは当然のことながら一朝一夕にはできません。グローバル人材は上記5機能の何れかまたは複数において、世界をまたにかけて活躍することを期待されるため、「さぁ、行ってこい!」と言われるその日が来る前に、当該分野において円滑にビジネスを進められるだけの知見とスキルを予め身につけておかなくてはならないのです。

グローバルに活躍している人材は、およそ以下の要件を備えています。

  • グローバルレベルでビジネスを構想できる力
  • 海外ローカル市場を理解し、そこでドメスティックに立ち回れる力
  • 未経験の市場・分野に挑もうとする「チャレンジ精神」と、打たれ強い「楽観的性格」
  • 自社の価値を誇りとし、自社が知られていない国でもそれを提供したいという強い思い
  • 異文化を背景とした人材を理解し、諭し、動かす力
  • 外国語(少なくとも国際共通語である英語)をビジネスの実務レベルで操る力
  • 国境を超えてどんどん動き回るフットワークの軽さ
  • 「外国」「外国人」「外国語」に壁を感じない、“無国籍感覚”
  • 言語・国籍・肌の色に拘らず、自然で友好的な人間関係を築ける社交性
  • 異質の文化を知り、認め、受け入れる姿勢と柔軟性

上記は、特にグローバル市場で活躍するために必須の資質ですが、これらに加え、以下のようなビジネスリーダーとしての普遍的要件も併せ持っておく必要があります(「次期経営幹部育成」「中堅リーダー層育成」の各項参考)。

  • 経営レベルの「高い視座」と「広い視野」から捻出される、「高い志」と「経営ビジョン」
  • 徹底して考え続けられる「強靱な思考力」、および経営者的直感ともいえる「洞察力」
  • 自分が「最後の砦」として経営を担うのだという、「結果に対する責任感」と「実行力」
  • 「この人について行きたい」と周囲に感じさせる、「魅力的な人間性」と「対人力」
  • MBAレベルの「経営理論と知識」
  • 所与の職務範囲を超えて成果を出そうとする、組織的地位に属さない「リーダーシップ」
  • 自身の世界観を広げ、貪欲に成長したいと希求する、強い「知的好奇心」
  • いつの日か、未だ見ぬ広い世界に打って出たいという「野心」と「行動力」

上記各項目は、大きく分けるとビジネスリーダーとしての基盤能力である「プロフェッショナル要件」と、グローバルに活躍する人材の必須要件である「インターカルチュラル要件」に整理することができます。そしてそれぞれを「プロフェッショナル(P)軸」と「インターカルチュラル(I)軸」という縦と横の軸に置き換えたものが下の図です。

「グローバルリーダー」の位置づけ

「P軸」は大きく、

  • Routine(こなす): 自分の守備範囲の仕事を十分にこなしているレベル
  • Manage(管理): 事業・組織のマネジメントが必要十分にできるレベル
  • Lead(リード): ビジネスリーダーとして事業拡大と組織変革を主導できるレベル

の3段階に分けられ、同様に「I軸」も、

  • Interest(興味): 外国語や海外事情に興味を持っているレベル。当該国で一人で立ち回るには、まだ壁を感じている段階
  • Knowledge(知識): 自分の専門領域として、当該国に関するある程度の体験と語学力を有しているレベル。出張ベースで行動することに全く抵抗はない
  • Insight(洞察): 当該国に長く住み、言葉・文化・ビジネス慣習を高いレベルで理解しているレベル。海外ローカル市場に独自の人的ネットワークも構築している

に分けることができます。グローバル人材、ひいてはそのより高いレベルにある「グローバルリーダー」とは、P軸・I軸ともに高いレベルにある人材ですが、逆にそのどちらかでも低いと、海外市場で満足に活動し成果を出すことはできません。たとい国内で自由闊達に活躍できる人材であっても、海外市場におけるビジネスプロトコルはおろか、ビジネスの国際共通語である英語さえ満足に使えない状態では(因みにビジネス英語の“満足なレベル”とは、「母国語に比較的近いレベルで話し、読み、書く力」を意味します)、現地市場の深い理解はおろか、ローカルスタッフとの密なコミュニケーションもできませんし、ましてや事業拡大に向けたリーダーシップを発揮することなどとても期待できません。どんなにP軸が優れていても、I軸の能力なくしては国内での活躍を再現することができないのです。

グローバル人材、ひいてはグローバルリーダーを育成するためには、育成対象者がP軸・I軸それぞれにおいて現在どの位置にあるかをまずは把握し、そこから今後どの方向に向けて育成していくべきかを定めなくてはなりません。それによって、「P軸」中心の強化か、「I軸」中心の強化か、またその双方掛け合わせた育成が必要なのかが決まってきます。

「真のグローバルリーダー」を目指して

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(1)「若手人材育成」~P軸・I軸双方を一気に強化~

「三つ子の魂百まで」を地でいくことができるのが、このフットワークが軽く吸収度の高い若手社員層です。30歳に達するまでに、可能であれば新卒入社後3年が過ぎる前に、P軸とI軸を一度に強化してしまいたいものです。特にI軸に関しては、若い頃の「異文化原体験」に勝るグローバル基盤作りはありません。10年後にバリバリ活躍していただくために、この時期にこそしっかり育成しておきたいものです。ただし、マネジメントを経験する機会はまだほとんどないでしょうから、海外研修の後は国内事業の現場を含め、P軸強化にも努める必要があります。その際には、「国内市場もグローバル事業の一つ」という認識をしっかり持たせておく必要があります。くれぐれも、育成するのは「グローバル人材」であって、「海外人材」ではないことにご留意ください。

(2)「国際派のマネジメント化」~P軸を中心に強化~

この場合の育成対象は、出張ベースあるいは海外勤務をすることで既に豊富に海外事業に携わっている社員です。海外での現場経験は豊富に積んでいるものの、マネジメントの基盤を持たないために「我流」で事に取り組んだり、またなまじ語学ができるだけに自分にマネジメント力があると“勘違い”していたりするケースがよく見られます。きちんとした経営教育とリーダーシップ開発を行うことで、グローバルリーダー予備軍としたいのがこの層です。

(3)「国内派の国際化」~I軸を中心に強化~

この場合の育成対象は、国内で中堅として大きな役割を既に果たしている層です。自社がグローバル化するに従い、国内で実力を出している人材に海外でも活躍してもらわなくてはならないという場合に、集中してI軸を中心に学んでいただきます。UCLA等の海外教育機関で「語学」「異文化理解」をしっかり履修するとともに、自社事業の展開をグローバルに構想するフェーズを設け、それまで国内市場に留まっていた視界を大きく広げていただきます。

(4)「真のグローバルリーダーへ」~自社グローバル化の「質」「量」を追求~

海外事業所長や海外法人の役員層など、既に高いレベルでグローバルに活躍しているシニアマネジメントが対象です。自社の組織がグローバルドメインにおいていかにあるべきか、あるいはグローバルに活動する企業の戦略・組織文化・制度はどうあるべきかについて深く討議するとともに、それを率いるリーダーとしての自己認識を高めます。研修プログラムは日本人と非日本人のミックスで行い、主として「グローバルシナジーの追求」と「具体的なグローバル戦略策定」の場とするのがベストでしょう。

グローバルアーク・コンサルティングでは、P軸の育成は基本的に国内のプログラムを用いての育成が可能と考えますが、I軸強化については、基本的に6ヶ月から1年間海外に居住し、現地の教育機関において学ぶことが必要であり、それが最も早く確実な方法であると考えています。もちろん国内で学習できることはありますし弊社でもいくつかプログラムをご提供していますが、いかんせんそれらは「座学」に過ぎません。本当の学習は体で覚えてこそだと思いますので、「とにかく日本を飛び出す!」という感覚で取り組んでいただきたいものです。

グローバルアーク・コンサルティングは現在以下の教育機関と提携関係にあり、留学前の準備から現地での受け入れ体制まで、すべて日本国内で支援させていただいています。また、海外研修中の遠隔コーチングも同時に提供しますので、単に外国に生活するだけではない、確実な成長機会の創出を支援致します。

米国 リーハイ大学 アイアコッカ・インスティテュート 「Global Village」 プログラム

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